宗教法人の財産には、特別財産、基本財産、普通財産の3つに分けられます。
特別財産とは、本尊などのその宗教法人にとってかけがえのない宝物や、宗教活動に欠くことのできない重要な器具類である什物などのうちから設定されます。
基本財産とは、宗教活動を行っていくうえで必要な財産的基礎となるもので、境内地、境内建物などの不動産のうちから、また、確実な有価証券などをこれに設定します。
普通財産とは、特別財産、基本財産以外の資産をいいます。
宗教法人のこれら3つの財産は、宗教法人の目的達成のために維持されなければなりません。
宗教法人の財産の適切な維持管理は、代表役員・責任役員の善管注意義務の重要な内容の1つです。
なお、特別財産や基本財産は、その宗教法人にとって重要なものですから、通常、規則において特に設定、変更の手続が規定されています。
不動産は、境内地、境外地を問わず、また、境内建物、境外建物を問いません。
境内地・境内建物の定義は、宗教法人法3条に規定されています。境外地・境外建物とは、宗教法人の所有する境内地でない土地、境内建物でない建物のことをいいます。
宝物とは、信仰の対象物で、その保全の必要性が高いものです。何が宝物であるかは、教義・由緒などに照らし、宗教法人において決定することになります。
処分とは、売買、贈与、交換、放棄、和解、地上権の設定などがあります。裁判例では、宗教法人の境外地における岩石の採取契約の締結も不動産の処分に当たるとされています。
担保とは、債務不履行に備えて、債権者に提供され、債権の弁済を確保するものをいいます。たとえば、本堂を建て替えるために金融機関からの借り入れにあたって、寺院の土地建物に抵当権を設定することがその例です。
借入の中には、たとえば、本堂を新築するにあたって建設業者に支払う報酬金債務を負うこともそれに含まれるとされています。
多額の債務を負う行為は、借入にあたると考えてください。
保証とは、債務者(主たる債務者)が債務を履行しない場合に、これに代わって履行する他の者(保証人)が従たる債務(保証債務)を負担すること、またはそのような制度をいいます。
主要な境内建物は、宗教法人にとって重要な不動産であることから、それらを新築等する場合は、一定の手続が必要とされています。
主要な境内建物は、経済上大きな価値を有する境内建物もしくは宗教上重要な価値を有する建物のことをいいます。
なお、新築等の行為が緊急の必要に基づくものである場合もしくは軽微のものである場合は、一定の手続は不要です。たとえば、火災延焼防止のために境内建物を除却することがこれにあたります。
境内建物または境内地の用途変更は、信者修行所を事務所に転用したり、普通の境内地を参拝者用の駐車場や寺院墓地に転用したりする場合をいい、用途変更後も依然として境内建物や境内地としてあり続ける場合をいいます。
また、境内地や境内建物の一部を茶店などの店舗に貸し付けたり、駐車場や老人ホーム、幼稚園等の用に転用したりするなど、当該行為によって境内建物や境内地がその目的以外の使われ方をする場合も含まれます。
それでは、宗教法人法23条の一定の手続とは、一体どのような手続なのでしょうか。宗教法人法23条は、同条1号から5号の行為を行うにあたっては、①規則で定める手続と、②公告が必要となります。
財産に関する事項(基本財産、宝物その他の財産の設定、管理および処分に関する事項)は規則記載事項となっています。
宗教法人法23条1号から5号までの行為を行うにあたっては、規則所定の手続を行わなければなりません。
被包括宗教法人である寺院の場合、重要な財産の処分にあたって、責任役員会決議の他に総代会の同意が必要であったり、包括宗教法人(宗派)の同意が必要とされている場合が多いです。
重要な財産の処分等にあたって、寺院規則所定の手続を行わなかったときは、包括宗教法人(宗派)によって、降格・罷免等の懲戒処分を受ける場合がありますので、ご注意ください。
公告とは、宗教法人の運営において重要な行為について、適切な方法により、信者その他の利害関係人にその旨を周知することを定めたものです。
規則で定めた手続を経た後、宗教法人は、それぞれの行為の少なくとも1カ月前に、信者その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければなりません。
宗教法人法23条1号ないし5号の行為について公告しなければならないとされたのは、宗教法人の財産の保全を図り、それがみだりにまたは不当に処分されることを防止するためです。