宗教法人と墓地関係事業者との間の法律関係とトラブル事例

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寺院と墓地関係事業者

寺院が墓地を経営するにあたって、石材業者等の墓地関係事業者との付き合い は必要不可欠です。

寺院境内型墓地であるならば、墓地関係事業者に関するトラブルは、檀家から指定石材店制度に関してクレームを言われる、檀家と石材店との間の墳墓建立費 用をめぐる紛争に巻き込まれる、墓地の修繕維持管理費用をめぐって寺院と墓地関係事業者との間に見解の相違があるといった比較的小さなトラブル程度で済むことが多く、大きなトラブルに発展することは通常考えにくいです。

ただ、寺院が霊園型墓地を経営しようとなると話は別です。霊園型墓地の場合、 開発販売運営に大きなお金が動きます。ただ、うまく霊園型墓地を開発分譲できた場合、それなりのリターンがあるため、事業者は、寺院に対して名義貸しを持ちかけてきます

また、開発するにあたって、地域住民の反対運動等に対して対応したり、行政と折衝したりするなど大変な時間と労力がかかります。このような実情から、霊園型墓地においては、寺院と墓地関係事業者との間でトラブルになりやすいですし、そのトラブルは往々にして深刻なものとなりがちです。

裁判例にみる寺院と墓地関係事業者との間のトラブル

墓地の管理委託をめぐるトラブルのケースで、寺院が、業者に対し、墓地の管理業務を委託していたところ、業者が墓地の管理業務により得られた入金状況の報告をしないこと等を理由に墓地管理委託契約を解除して業者が墓地使用者から受け取った管理料の返還を求めた事案です。

同判決は、「一般に、委任契約において、受任者は、委任者の請求があるとき は、いつでも委任事務の処理の状況を報告すべき義務がある(民法645条)ところ、 このことは、本件管理委託契約についても同様であり、上記のとおり、 本件管理委託契約の委任事務として本件墓地に関する全ての金銭収受に関する業 務が定められていることからすれば、被告は、本件管理委託に基づき、 原告(寺院)に対し、原告の請求に応じて、本件墓地の管理運営に係る収支の状 況や本件墓地口座の入出金の状況等を報告すべき義務を負っているべきである」としたうえで、業者の報告義務違反を認め、その程度は重く、信頼関係が破壊されていることから寺院が業者に対して無催告で行った解除の意思表示も有効であるとしました。

墓地の管理業務は、墓地使用者からの使用料の収受・墓地の清掃・管理棟の管 理・墓地利用者名簿や管理台帳の管理等を業務とするものであり、その法的性質 は「法律行為でない事務の委託」であることから準委任契約に基づく業務であるといえます。

寺院から墓地管理業務の委託を受けた業者としては、善良な管理者の注意をもって業務を行わなければなりません。その他、業者には、報告義務、受取物の引渡義務、金銭の消費についての責任といった義務・責任があります。

上記裁判例は、業者に報告義務違反があったとして債務不履行解除を認めていますが、その他、準委任契約は、当事者の信頼関係を基礎とする契約であることから、民法651条は準委任契約はいつでも解除できるとしています(ただし、相手 方に不利な時期に委任を解除した場合等は、やむを得ない事由があるときを除き相手方の損害を賠償しなければなりません)。


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