【解説】宗教法人の書類と帳簿の閲覧請求権について

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宗教法人(寺院)の組織運営

宗教法人の書類と帳簿について

宗教法人法により備え付けられた書類および帳簿について、一定の場合、信者その他の利害関係人の請求があれば、宗教法人は、書類および帳簿を閲覧させなければなりません。

宗教法人法は「宗教法人は、信者その他の利害関係人であって前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは、これを閲覧させなければならない」と規定しています。

「信者その他の利害関係人」が、「帳簿を閲覧することについて正当な利益」があり、「閲覧の請求が不当な目的によるものでない」場合は、備付書類・帳簿を閲覧させなければなりません。

「信者その他の利害関係人」は、各宗教法人によってその特性・慣習等が異なるので、その判断権は閲覧請求を受けた宗教法人にあります。

平成7年の改正当時の衆議院特別委員会において、文部省(当時)・文化庁は、「信者その他の利害関係人」の具体例として、次の5つを挙げています。

  1. 寺院の檀徒あるいは神社の氏子などのうち、その宗教法人と継続的な関係があってその財産基盤の形成に貢献してきた者
  2. 総代といった地位があり法人の管理運営上の地位が規則等で明確になっている者
  3. 宗教の教師などで法人との雇用関係にある者、債権者、保証人などでその宗教法人と取引等の契約関係のある者
  4. 法人の行為により非常に大きな損害を被って損害賠償請求権をもっている者
  5. 包括関係・被包括関係にある宗教法人

「帳簿を閲覧することについて正当な利益」は、次の両方が考えられます。

  • 宗教法人の適正な運営のための開示(檀信徒が、寺院運営が適正になされているかを事務処理簿や議事録を見て検討する等)
  • 債権の確保(会計帳簿を閲覧することで差押可能な財産を調査する等)

「正当な利益」の判断にあたっては、備付書類・帳簿ごとに(書類によってはその一定部分ごとに)、かつ、信者その他利害関係人ごとに、それぞれ閲覧することについての正当な利益を、第一義的には閲覧請求を受けた宗教法人が判断します。

「不当な目的」の具体例としては、平成7年改正当時の衆議院特別委員会において、当該宗教法人を買収する目的、閲覧によって得た情報を売却する目的、誹謗中傷をする目的があげられています。「不当な目的」があるか否かは、閲覧請求を受けた宗教法人が判断します。

いずれの要件とも第一義的には閲覧請求を受けた宗教法人が判断しますが、最終的な閲覧請求の可否は裁判所が決めることになります。訴訟まで持ち込まれないように、利害関係人が納得するような手続を整備しましょう。

たとえば、閲覧請求にあたって、以下の書類を提出させ、それを踏まえて各要件を判断していくというのも一つの判断です。

【書式1】閲覧請求書

閲覧請求書

令和○年○月○日

宗教法人「○○寺」

代表役員 ○○ ○○ 殿

住所
氏名

私は、貴寺に以下の書類の閲覧を請求します。

  1. 閲覧を求める書類
  2. 貴寺との利害関係(檀信徒等具体的にお書きください。)
  3. 閲覧請求を行う理由

そして、閲覧の可否決定を行う場合は、以下の可否決定通知書を請求者に交付するとよいでしょう。

【書式2】可否決定通知書

可否決定通知書

令和○年○月○日

○○ ○○ 殿

住所

宗教法人「○○寺」

代表役員 ○○ ○○ 殿

貴殿の閲覧請求に対して、当寺は、以下のとおり判断したので、通知します。

  1. 閲覧請求にかかる備付書類
  2. 閲覧ができる書類
  3. 閲覧ができない書類およびその理由

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