墓地の経営主体が、地方公共団体・宗教法人・公益法人に限られています。株式会社等の民間の営利法人に対して墓地経営許可はなされません。
しかしながら、都市部においては、墓地不足は解消されておらず、また、墓地造成には用地の取得や開発造成などに多額の資金が必要なため、宗教法人が自ら経営するのではなく、建設業者などの民間営利法人が宗教法人の名義を借りて実質的な墓地経営を行うことが多く見受けられます。
このことを墓地の名義貸しといいます。
墓地の名義貸しの具体例としては、「まず寺院(宗教法人)に対して石材店等の営利企業(仮にA社とする)が墓地経営の話をもちかけ、この寺院はA社より資金その他について全面的なバックアップを得て墓地経営の許可を受ける。
ところが当の寺院は墓地販売権を始めとした墓地経営については実質的に関与しない取り決めがA社との間で交わされている。
そしてA社は墓地使用権とともに墓石を販売して多大な収益を得るが、これは一部を除いて寺院の収入とはならない」というのがあります。
墓地の名義貸しは、何が問題なのでしょうか。まず、墓埋法では、墓地の経営許可制度を定めていますが、名義貸しがなされると実質的な主体の交代が行われてしまい許可制度の意義が失われてしまいます。
また、名義を借りる事業者は、 墓地造成にあたって用地を宗教法人に寄付したり、名義を貸す宗教法人に相応の名義料を支払ったりかなりの資本を投下しますので、自らを宗教法人の役員にするよう求めるなど、宗教法人の経営に口出しをしてくるようになります。
そして、 墓地の運営や管理について責任を負うのは、事業者ではなく、名義を貸した宗教法人であり、墓地の運営や管理について問題が生じたときは、是正命令を受けたり(墓埋法19条)、刑罰を受けたり(墓埋法20条、21条)、不法行為責任(民法709条 以下)を負うことになりかねません。
さらに、将来の収支を見ると、確かに、当 初は墓地使用料等で多額の収入を得るかもしれませんが、墓地販売が終了した後、 墓地の管理費に多額の費用がかかるのに比して、墓地から得られる収入は管理料・線香や供花等わずかなものです。名義を貸した宗教法人は、将来にわたって 「赤字」の墓地を抱え込むことになりかねません。
墓園・斎場実務研究会編 『Q&A 墓園・斎場管理・運営の実務(加除式)』(新日本法規出版) 84頁には、 1000区画の事業方墓地経営の収支シミュレーションが掲載されていますが、事業予定期間終了後の年間収入は1900万円と見積もられているところ、年間管理・運営費は4200万円も見積もられています。
事業者が墓地販売で多額の収益を得てい るのに対して、名義を貸した宗教法人は、確かに名義貸し料で一時的な収入は あったものの、それ以後は毎年数千万円もの赤字を半永久的に負い続けることに なってしまうのです。
名義貸しは法的なリスクがあるのはもちろん、それ以上に宗教法人が破綻しか ねない大きな経済的なリスクを伴うものであり、絶対にやめましょう。
業者は、名義貸しを依頼するときに「手続は全部こちらでやらせていただきます。貴寺にご迷惑はおかけしません。お礼もしっかりさせていただきます」などと甘言を弄して近づいてきますが、決してその甘言に乗ってはいけません。
名義貸しによって墓地の経営許可が取り消された事例もあります。
「原告は土地における墓地経営をする意思はなかったのみならず、このような名義貸し行為を利用して原告自らの利益を得ることを図り、本件霊園の管理運営については一切をDや明星学園らに任せ、目録1各土地所有権の確保も全く図れなかったのであるから、原告の名義貸しに関する一連の行為が、 墓地の永続性及び健全な経営の確保を害するおそれのある行為であることは明らかである。 このような原告の行為は、墓地埋葬法及び墓地埋葬条例の趣旨を没却するものであり、墓地の永続性及び健全な経営の確保を著しく害するものであって、墓地の永続性の確保、利用者の利益保護の観点からみて公共の福祉を害するものというべきである。 したがって、墓地埋葬法19条の『公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき』という墓地の経営許可の取消要件に該当するといえる」